毛が自然に生えかわるメカニズム

円形脱毛症で髪の毛が抜ける原因を説明する前に、その前提となる毛の生えかわりについて紹介します。
ヒトの毛は、以下のような構造をしています。

1-3）を参考に作成.

ヒトの場合、髪の毛は毎日50～100本ほど自然に抜け、また生えてきます ^2-4）。この生えかわりのサイクルを「毛周期（もうしゅうき）；ヘアサイクル」と呼びます ^1-5）。毛周期は成長期、退行期、休止期の3段階に分けられます。

1,3-5）を参考に作成.

円形脱毛症って、どうして髪や毛が抜けるの？

一時期、「円形脱毛症の原因は精神的ストレス」といわれていた時期がありました ^3,4）。今でも、そのように信じている人が多いようです。しかし現在では、医学の進歩により、円形脱毛症は自己免疫性疾患だと考えられるようになりました ^6）。自己免疫性疾患は、いわば「免疫が暴走して、自分の体の正常なものを攻撃して病気を起こしている」状態です。
ヒトの体にはさまざまな免疫システムが備わっていますが、円形脱毛症ではTリンパ球という免疫細胞の働きが問題になります ^4,7）。正常なTリンパ球は、ウイルスに感染した細胞やがんになった細胞を攻撃・排除する役割を担っています。しかし、円形脱毛症の場合、Tリンパ球が誤って毛球を攻撃してしまいます。その結果、成長期から退行期・休止期へ移行しやすくなり、これから太く長く成長するはずだった髪の毛が、まだ細く短いうちに抜けてしまいます。その後、成長期になって毛が生えてくればよいのですが、毛が抜けたままになってしまうのです。

4,7）を参考に作成.

このように、円形脱毛症は成長期の毛がダメージを受けて抜けることから、成長期脱毛症のひとつに位置づけられます。

円形脱毛症が起こる理由は、免疫システムの異常だけなの？

免疫システムの異常以外にはっきりしたことはわかっていませんが、発症するときにはさまざまな要因やきっかけ（誘因）が絡んでいると考えられています ^5-7）。
まず、アトピー素因や円形脱毛症以外の自己免疫性疾患をもっていると、円形脱毛症になりやすくなります。

遺伝的な背景も関係するといわれています ^6,7）。ヒトの白血球にはヒト白血球抗原（HLA）の型がありますが（赤血球にA、B、O、ABの血液型があるのと同様、白血球にも型があるとお考えください）、その中で、円形脱毛症に関係するHLA対立遺伝子（アリル）をもっていると発症しやすくなります ^7）。また、免疫にかかわる分子の遺伝子多型いでんしたけいも同様に、発症につながりやすくなります ^7）。
また、頭部のケガやウイルス感染症、出産、さらには精神的ストレスが誘因になることがあります ^5-7）。しかし円形脱毛症は、明らかな要因・誘因がなくても発症しうる病気です ^6,7）。
つまり、免疫の暴走（自己免疫）が主な原因ではあるものの、それ以外にもいろいろな要因・誘因が複雑に絡んでいると考えられています ^4）。